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プロポーズ体験売り出します
第4章 一人目のお客様

                 

 翌日、俺の報告にまり恵ちゃんも朝っぱらから目を潤ませた。
昨日見た夕日は今まで見た中で一番きれいに見えた、なんて
男のセンチメンタルを笑い飛ばすことなく静かに口角を上げた。

「大満足、そう言っていただけました」

前例のない全くの手探り状態であそこまで出来た。
大満足という最上級の褒め言葉をもらった。
俺は初仕事の結果に胸を張った。

「ほんと、よく頑張ったわ」

ありきたりでごめんねとまり恵ちゃんは付け加えたが、
まり恵ちゃんの小刻みに震える唇を目にして、うまく言葉にできなくても仕方ない、
と俺は静かに首を振った。

「次も頑張ります。これからたくさんの人に喜んでもらえて
 俺らもやってよかったって喜び分かち合えるような商品を
 じゃんじゃん作っていきましょうよ、ね!」

まだまだ走り出したばかりだけど、きっと多くの感動の場面に立ち会える。
二人で作っていこうと俺の方は気分を高めているのに、
まり恵ちゃんはなぜか黙ったまま薄く笑みを浮かべるだけ。
なんだ?この空気。俺たちの間に温度差がある。不思議な温度差。
そんな俺の不安をよそに、まり恵ちゃんは別の何かを考えるかのように
窓の向こうに見える本社を見上げていた。
ビー玉のような冷たい瞳で。




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