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不器用な夫
第8章 当主
曽我家も色々あるのだなと曽我の苦笑いを追求はせずに僕と曽我は京都行きの新幹線に乗り込んだ。
ただ、ワクワクとしてた。
京都へは何度となくは行ってる。
初めての家族旅行も京都だった。
その家族旅行で父には学会というオマケ付き。
僕と母がホテルに取り残されるという家族旅行。
悲しげに僕に笑いかけて京都で観光をする母の姿だけは覚えてる。
国松家の呪いを知らない幼い僕は、次は僕が母を京都に連れて来ようとか考えたりもしてた。
その時の母が
「だから…、京都は嫌いなの…。」
と呟いた意味すらわからないほど幼かった。
そんな悲しい思い出の京都に日帰りかもしれないが曽我という男と行けるだけで嬉しくてはしゃぐ気持ちが抑えられない。
「ねぇ、曽我君。お腹は空いてない?駅弁とか食べる?」
隣の席に座る曽我に聞いてみた。
「曽我君…?」
曽我は自分の口元を手で押さえて赤い顔をしてる。
「気分が悪いの?」
違う…。
興奮する僕のフェロモンに曽我が戸惑ってるのだ。
「だ…いじょうぶ…。」
曽我が僕から目を逸らす。
「席を変わろうか?僕は1人で大丈夫だから…。」
幸いな事に車両内の乗客はほとんど居ない。
藤原家が用意してくれた新幹線のチケットは僕の為にわざわざ一番後ろの隅の座席指定になってる。
曽我は僕から離れれば済む事だ。
僕の興奮が治まれば曽我の興奮も治まるはず…。
ふわりと僕の肩を抱くように曽我が僕を抱き締める。
「大丈夫…、俺が未熟だからいけないんだ。」
曽我が僕を抱く手に力が籠る。
「曽我君は悪くないよ。」
「そうじゃない、藤原家はイかせ屋であるがゆえに国松家のフェロモンに耐えられる唯一の人間として関係を築いてる。」
「耐えられる!?」
「叔父の清太郎(せいたろう)さんはそう言ってた。」
それが国松家と藤原家が長く続く関係の理由なのだと現藤原家当主である藤原 清太郎さんが言った。