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不器用な夫
第8章 当主
「でも肝心な事は何も教えてくれないんだよ…、あの人は…。いつだって偉そうに俺を未熟だと文句ばかり言うだけの人なんだ。」
曽我が子供みたいな膨れっ面をする。
「そうなの?」
「知りたきゃ、国松を連れて藤原家に来いとしか言わなかった。国松には俺が働いた無礼のお詫びもしなければならないからってさ。」
「それは…、曽我君は何も知らなかったんだし。」
「それを許してくれる優しい叔父じゃないんだよ。察する事が出来なかった俺が悪いの一点張りだ。」
ブツブツと曽我が零す愚痴を聴きながら僕は京都へと近付くのが怖くなって来る。
強面で厳つい顔をする曽我の叔父を想像する。
名家のトップクラスである藤原家当主。
ムキムキで厳つい顔のおじさんのイメージしか僕には湧いて来ない。
怖い人…。
どうしよう…。
僕にも失礼があれば直ぐにでも父を京都へ呼び出す事になる。
興奮よりも緊張が高まる。
「大丈夫だよ…。」
身体を強ばらせた僕の肩を曽我が優しく引き寄せる。
小さな僕は曽我の腕にすっぽりと包まれる。
なんて安心感なのだろう…。
彼は無理矢理に人に触れる人じゃない。
自然な彼の振る舞い。
気付けば彼の腕の中に自分が居る。
これがイかせ屋として訓練を受けた男なのだと初めて知った。
その曽我を未熟だと言う清太郎さん…。
ドキドキばかりする僕を新幹線が清太郎さんが待つ京都へと連れて行く。
久しぶりの京都はとても温かく、小春日和のとても気持ちの良い日差しで僕と曽我を迎えてくれた。
駅を出れば、再び藤原家からの迎えの車に乗り込み藤原家へと向かう。
30分ほど走り立派な日本家屋のお屋敷の前で車が停まると緊張で足が竦む。