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不器用な夫
第8章 当主
自慰行為…。
つまりはマスターベーションを自分で行うオナニー行為を意味し、そんな事を綺麗な顔の男の人から真っ直ぐに見つめられて聞かれるとか考えもしない。
「それは…。」
「正直に答えて…。」
ふわりと抱き締めて僕の耳元に顔を寄せた清太郎さんが優しく囁く。
「多少は…。」
前は公平任せだった。
身体が疼けば公平を求めるを繰り返す。
それを止めた今は自分でする。
問題は自分で行う行為にはほとんど興奮が伴わずにオーガニズムに致さない。
「やはりか…。」
清太郎さんが悲しげに僕を見る。
何故か僕に哀れみを見せる清太郎さんに、ただただ戸惑うだけだ。
「君の男性経験は?」
確信を聞かれてアタフタとする。
クスリと清太郎さんが笑い
「次期当主殿は随分とおませだね。」
と僕の耳にチュッとリップ音を奏でる。
どうしてよいかわからずに俯いて清太郎さんの成すがままになってる。
「こちらに…。」
清太郎さんがまた僕の手を握り立ち上がる。
襖の向こうには来た時とは違う廊下が見える。
清太郎さんにエスコートされて藤原家の奥へと進んで行く。
不思議な感覚だけを感じる。
ふわふわとした気分だけが続く。
和式造りの立派な日本家屋の奥に不似合いな洋式の扉が見えて来る。
その扉を開けて清太郎さんが僕を中へ誘う。
またしても何もない部屋。
真っ赤なビロードの絨毯に目が痛くなる。
更に奥の扉を清太郎さんが開く。
その部屋を見て僕は目を見開く。
「ここは?」
「んー…、国松家専用のイかせ屋の仕事部屋というべきかな?」
清太郎さんが曖昧な笑顔をして答えた。