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不器用な夫
第9章 精液
清太郎さんが自分の方へと僕の腰をグッと引き寄せて顔を覗き込む。
暖かい春の陽射しのような笑顔ではなく、鋭く厳しい目をして僕を真っ直ぐに見る。
とても綺麗な顔なのに清太郎さんの厳しさが怖くて背筋に冷たいものが流れる。
「そう…、僕は確かにゲイだ。だが…、君はどうなの?イかせ屋は本命にしかキスをしない。本番と言われる挿入行為も本命にしか行わない。」
切ない清太郎さんの声。
その瞳には怒りに似た哀しみが浮かんでる。
「本命だけに…?」
「そう…、君は僕に本気で愛されたいと願うの?ゲイである僕を本気で愛せるの?愛がないSEXで身体だけを満足させるつもりならばイかせ屋などという風俗の男は君にはもう必要がない。」
それだけを言うと清太郎さんが僕の身体をベッドへと突き放す。
「清太郎さんっ!」
慌てて清太郎さんの背中に縋る。
怖かった。
清太郎さんに見捨てられるのが怖かった。
清太郎さんを本気にさせる意味すらわかってなかった子供の僕は清太郎さんしか頼れない。
清太郎さんと本気で愛し合う。
違う…。
それは国松家の滅びを意味する。
しかも僕はゲイじゃない。
清太郎さんを愛する事なんか不可能だ。
清太郎さんの身体に溺れる事はあっても、いずれは心が清太郎さんを拒否する。
イかせ屋の存在はそんな国松家の性欲のコントロールに必要な存在であり、嫡子の誕生に必要不可欠な存在である。
僕如きが軽々しく扱ってよい存在じゃなかった。
自分が情けなく惨めな気分になり俯いた。
「すまなかった…。君にそんな顔をさせたかった訳じゃないんだ。君はまだ高校生で国松家の性についても入り口を垣間見ただけだったね。」
清太郎さんの声が優しくなる。
もう一度僕の腰を引き寄せてから顔をゆっくりと愛おしげに撫でて来る。