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不器用な夫
第9章 精液



僕の頬に一滴の水が流れ落ちる。

僕は国松家の次期当主だ。

快楽に負ける事は出来ないのだ。

それを僕に理解させようとする清太郎さんの優しさが痛いくらいにわかるから…。

泣いてる場合じゃない。

それでも頬を涙が蔦う。

清太郎さんはゆっくりと僕の瞼にキスをする。


「少し言い過ぎたね。君は本当によく頑張ってるのに…。」

「いえ…。」


小さな僕は清太郎さんの腕の中にすっぽりと収まり清太郎さんの温もりだけを感じる。


「昌に見習わせたいよ。」

「曽我君は…。」

「甘やかさないでくれ。あれは本当に未熟者だ。」

「でも…。」

「あれはまだイかせ屋の本質など微塵も理解をしていない。人助けだとあちこちに首を突っ込むだけの子供でしかない。」


清太郎さんが冗談っぽく笑う。

その目は笑ってない。

哀しみに溢れた目をしてる。

藤原家も何かしらの嫡子問題を抱えてると聞く。

清太郎さんが少しだけイかせ屋の事を話してくれる。

1000年以上も続く伝統。

表向きは女性を助ける為にオーガニズムについて研究を繰り返して来たとなっている。

その実は国松家の為にと得た技術。


「昌はまだ見習いで女性に親切にすればいいとしか考えていない。その結果がまだ見えてないのだ。」


清太郎さんはいずれ曽我が親切にした女性同士で争いが生まれると言う。

人は自分にないものを欲しがる。

そして争いが始まる。


「その為には自分を辞す事が大切な事だ。君は自分に枷を負わせ、自らを辞す。国松家の身体を辞す事は並大抵の事では出来ない。」


清太郎さんはそう言うが生まれつきのものだから、そんなに凄い事だとは感じない。


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