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不器用な夫
第10章 キス
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時間の感覚がなかった。
窓すらないピンク色の部屋…。
目を覚ませば清太郎さんが僕の頬にキスをする。
まだ恋人のような気分を清太郎さんが与えてくれる。
僕は清太郎さんに甘えて清太郎さんにしがみつく。
「こらこら、朝からおじさんをその気にさせるんじゃないよ。」
清太郎さんの言葉で朝なのだと知る。
「もう朝?」
「そうだよ…、今は身体が気持ち悪いだろ?お風呂に入るといい。」
僕に柔らかなバスローブを着せて清太郎さんが国松家専用の部屋から僕を連れ出した。
まだ性的な欲求は身体に残るがフェロモンの放出は随分と収まってる。
「君は浴衣を自分で着れる?」
「浴衣ですか?」
「君の服は洗濯中だ。自分で着れないのなら昌を寄越すから昌にやらせなさい。」
「曽我君に?」
「あれはまだ見習いで下僕の身だ。」
意地悪に清太郎さんが笑う。
冗談にも聞こえるが、冗談じゃない。
国松家も藤原家も未熟な者が当主になれば滅びの道を辿る事にしかならない。
僕はそれを清太郎さんから身体に刻み込まれた。
男の愛撫に溺れる未熟者は国松家の当主になる事は許されないと…。
「後の事は昌に任せる。失礼があれば直ぐにでも僕に言いなさい。」
そう言って清太郎さんは僕をお風呂の脱衣場に残して立ち去った。
藤原家の湯殿は見事だと思う。
岩で囲まれた湯船。
床は畳敷き…。
桶も椅子も全てが檜であしらえられて最高級の温泉に入る気分になる。
湯船で少し滑りを感じる湯に浸かる。
「これ…、本物の温泉を引いてるんだ。」
独り言を呟き、藤原家の凄さを実感する。
客を持て成す事に完璧な姿勢を崩さない藤原家で当主を務める清太郎さんの強さに憧れる。
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