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不器用な夫
第10章 キス
僕に国松家の当主が務まるのだろうか…。
不安に押し潰されそうになる。
清太郎さんは僕を助けてはくれる。
だが僕は清太郎さんに縋り甘えるだけの男ではいけないとわかってる。
不安を振り払うようにして湯船から上がり風呂場を出ればバスタオルを持つ曽我が僕を待ち受ける。
「こちらに…。」
「自分でやるよ。」
笑いながら曽我からバスタオルを取り上げる。
「みっともないとこを見せちまったな。」
曽我が赤い顔をして俯いた。
彼は僕のフェロモンに屈した挙げ句、僕に勃起して欲情したのだ。
それはイかせ屋には屈辱にしかならない。
「気にするなよ。」
僕だってまだまだ未熟者なのだ。
曽我を責められる立場ではない。
身体を拭く僕の隣で別の小さなタオルを取り出した曽我が僕の髪を拭いてくれる。
「お前の力になりたいと思うんだ。俺はお前の親友でありたいと…。」
曽我の言葉は嬉しく、同時に疎ましいと思う。
清太郎さんが曽我が未熟者だと嘆く意味が僕には理解が出来る。
曽我は無責任に人助けをしようと他人の世界に首を突っ込むだけで、相手が求める助けの大きさやその闇の深さをまだ理解出来てはいない。
「親友…?」
僕は曽我を鼻で笑う。
「お前、学校でいつも1人だから…。」
「それは僕が望んだ事なんだよ。」
国松家の当主は孤独であるべきだ。
国松家の当主に近付ける人間は選ばれた人だけだ。
清太郎さんのように…。
母のように…。
僕もこの先は選ばなければならない。
曽我を僕の友人とするか、しないかを…。
今は未熟者の曽我を友人だと認めて迂闊に僕の傍に置く事は危険過ぎる。