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不器用な夫
第10章 キス
今日は清太郎さんが仕事らしい。
国松家には清太郎さんが僕を預かる事を連絡済みだと曽我が言う。
「明日まで国松にはこの屋敷に居て貰えって清太郎さんが言うんだよ。自分は今夜は帰れないんだとかなんとか平気で言うくせに…。」
「清太郎さんは…、帰って来ないの?」
「これのとこみたいだ。」
曽我が小指を立てて見せる。
恋人を意味するサイン…。
清太郎さんの本命…。
胸が痛くなる。
清太郎さんには既に愛する人が居る。
清太郎さんにとって今の僕はあくまでも同情の男…。
「なぁ、行こうぜ。」
退屈なのは曽我だ。
僕の為じゃない。
清太郎さんも…。
曽我も…。
僕の為に存在はしても僕の為の男じゃない。
「行かない…。」
心にぽっかりと穴が空いた感覚が寂しさを生み出し苛立ちを増幅させていく。
「え?なんで?具合でも悪いのか?」
曽我は僕の心を理解してくれない。
この心の隙間を誰でもいいから埋めてくれと叫びそうになる。
「疲れてるから…。」
そう言って裸足のまま庭の方へと飛び出した。
帰りたい。
1人で誰も寄せ付けずに孤独になりたいとばかり考えてしまう。
それだけはするなと清太郎さんから教わったばかりなのに…。
僕が1人で苦しむ必要がないようにイかせ屋が存在するのだと清太郎さんは教えてくれたのに…。
そのイかせ屋が今は本命との愛の交合いに夢中で僕の苦しみなど気付きもしてない。
誰でもいい…。
僕の心を埋めて欲しい…。
身体の乾きだけなら公平でも埋められる。
心だけはどうしようもない。
誰かを求めるように僕は僕を抱き締める。
「国松っ!」
曽我が僕の腕を掴む。
「大丈夫か?本当に辛いのなら直ぐに寝床を用意させるし国松家から誰かを迎えに寄越して貰うよ。」
迂闊な曽我が僕を覗き込み顔を近付ける。