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不器用な夫
第10章 キス
「曽我君…。」
彼の髪を撫でてみる。
柔らかく、スルリと僕の手から直ぐに逃げてしまう髪を幾度ともなく撫でみる。
曽我はやはり藤原家を継ぐ男なのだ。
未熟者だと清太郎さんは曽我を叱るが曽我に跡継ぎの資格がないとまでは言わない。
ただ…、助けると決めた相手に対し馬鹿みたいに必死になり過ぎる曽我だから少しは落ち着きなさいと清太郎さんは言いたいだけなんだ。
今の曽我は不幸な僕を助ける為に僕の支えになりたいと必死なだけだ。
そんな曽我がおかしくてクスクスと意地悪に笑ってしまう。
「本当にイかせ屋をするつもり?」
少し曽我をからかってやる。
「国松が…、望むなら…。」
曽我の真剣な表情にますます笑いが込み上げる。
今日1日、孤独を選んだ僕が曽我には、よほど可哀想に見えたのだろう。
「俺に出来る事なら…。」
笑う僕に曽我は真剣なんだと訴える。
ウザいよ…。
そういうのは嫌いだ。
だけど…。
僕は曽我が好きだと思う。
僕には出来ない日の光の中で輝ける人だから…。
僕の憧れであり妬ましいほどに羨ましい存在だ。
その曽我を僕は手に入れる。
国松家の次期当主として藤原家次期当主を手に入れる事は決して悪い話じゃない。
曽我の顔を撫でてやる。
「なら…、キスしてよ…。」
僕の言葉に曽我が目を見開く。
「それは…。」
狼狽える曽我がますます可愛いと思う。
「出来ないよね…、なら…、おやすみ。」
曽我を突き放して布団に入ろうとした。
ぐいと押し倒されて僕の身体がふかふかの布団に沈む感覚がする。
同時に僕の全身に有り得ない体重が乗せられる。