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不器用な夫
第10章 キス



重いぞ!

そんな文句は言えない。

僕の口を曽我の口が塞いでる。

何故…?

イかせ屋はキスをしないと清太郎さんが言ってた。

本命だけにしかキスをしないと…。

しかも、曽我はゲイじゃない。

ならば…。

これは…。

考えがまとまらないほどの優しいキスだった。

ゆっくりと僕の唇を撫でるように曽我の唇が動き、おずおずと僕の口の中へ曽我の舌が入って来る。

これが…。

曽我のキス…。

僕の髪を撫でながら、ゆっくりと深いキスをする。

舌が絡み合い、唾液が混ざり合う。

ぬちゅぬちゅと卑猥な水音がするほどの激しいキスを曽我から受ける。

自然と僕の腕は曽我の首に回されて曽我は僕の腰を優しく抱く。

ただ、ひたすらキスをする。

離れる事を躊躇うように僕と曽我がキスをする。

ゆっくりと曽我が僕から唇を離すとキラキラとした糸が引き、まだお互いを繋ぎ止めようとする。


「なん…で…?」


曽我に聞いてた。

不思議な事に今の僕は興奮をしていない。

寧ろ、曽我のキスに大きな安心感だけを懐き僕の気持ちは穏やかになった。


「言ったろ?俺は国松の為に出来る事は何でもしてやるって…。」


曽我は厳つい顔をくしゃくしゃにして少年のような無邪気な笑顔を見せる。


「でも…。」

「言っとくけど俺はゲイじゃない。まだ未熟者でイかせ屋が存在する本当の意味すらわかってない。清太郎さんからキスは本命だけとか言われても、その本命すら今の俺には居ない。」


曽我は僕の顔を優しく撫でる。


「けど国松とは友達で居たいんだ。お前が辛い顔をするのが俺は嫌なんだ。だからキス程度でお前が満足するなら俺は何度でもしてやるよ。」


真っ直ぐに僕を見つめる曽我に照れ臭くなった。


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