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不器用な夫
第10章 キス



呆れるほどに真っ直ぐなお馬鹿さん。

そんな曽我を僕は笑う。

ゲラゲラと笑い出す僕に曽我がまた狼狽える。


「国松…。」


捨てられた仔犬のような情けない表情をする曽我が可愛くて抱き締める。


「一緒に寝よう…、でも、今夜はもう何もしないでくれよ。」

「国松がそれでいいのなら…。」


曽我と抱き合って眠る。

暖かく安心感だけに包まれる。

ぽっかりと空いてた心が曽我に満たされて満足する。

僕の欲求や感情でフェロモンの濃度が変わる意味が少しは理解出来た。

曽我のように穏やかな気持ちで接する事が出来れば僕はフェロモンで相手を狂わせる事はない。


「曽我君が居てくれて良かったよ。」

「なら…、良かった。」

「でもね…、学校では僕を1人にして欲しい。」

「なんで?」

「それが国松家の男なんだ。」

「わかった。国松がそうしたいならそうする。」

「ありがとう…。」


温もりと安心感が睡魔を引き寄せる。


「おやすみ…。」


僕の額でリップ音がする。

僕は人生で初めて心が満たされる親友を手に入れた。





翌朝、曽我が僕の服を渡してくれる。


「着替えたら朝食だ。」


そう言って笑う曽我。

綺麗にされた自分の服を受け取り、そろそろ東京に帰れという意味を悟る。

着替えをして曽我と朝食の用意がされた部屋へ向かうと既に清太郎さんが居る。


「よく眠れたかい?」


春のような陽射しに似た笑顔。

僕は穏やかな気持ちで清太郎さんに笑顔を返す。


「ぐっすりと…。」

「それは良かった。さあ、朝食にしよう。」


よく眠り、よく食べろと清太郎さんが言う。

不健康な生活は心が落ち着きを失くす。


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