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不器用な夫
第10章 キス
国松家の男の身体は何かと大変ではある。
そのコントロールを藤原家から学んだ。
朝食の後…。
「少し話そうか…。」
清太郎さんが曽我には下がれと命じて僕だけを縁側へ連れて行く。
「君を帰す前に伝えておく事がある。」
清太郎さんの瞳にはまた悲しみが生まれてる。
僕は黙って小さく頷く。
清太郎さんがそっと僕の手を握る。
「君の精液を調べた結果だ…。」
予想はついてる。
僕の予想通りの答えを清太郎さんが言う。
「全ての精子が死滅してたよ。」
僕は平気なのに清太郎さんが泣きそうな顔をする。
「それが国松家の男ですから…。」
僕の方が清太郎さんを慰めるように言う。
「君は優しくて強い子だ。」
清太郎さんが抱き締めてくれる。
精子の事は父から聞いている。
国松家の男の精子は女性の体外に出された場合、全て即座に死滅する。
それは人工授精などが不可能である事を意味する。
逆を考えれば、国松家の精液を悪用されずに済む防衛本能だとも言える。
国松家の男はイかせ屋に頼るしか女性を妊娠させる事が出来ない。
それ以外の方法はないかと清太郎さんは僕の為に探ってくれただけだ。
そして、その優しい清太郎さんに僕は聞く。
「僕はちゃんと国松家の嫡子を残す事が出来るでしょうか?」
僕の答えに清太郎さんが強く頷いてくれる。
「いつか、君が愛し君だけを愛してくれる人がきっと見つかる。君の全てを理解して君の為だけに愛を与えてくれる人が必ず居る。そんな人に出逢えたら大切にしてやりなさい。」
清太郎さんの言葉が少し照れ臭く感じた。
僕なんかを…。
国松家の男なんかを…。
愛した母は不幸になった。