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不器用な夫
第11章 愛撫



夕食は本来なら執事である公平が作る。

脳筋のくせに器用な男…。

不器用な僕は公平の真似をして指が血塗れになった覚えしかない。

カップラーメンですら軽い火傷をした。


「坊っちゃまは不器用なのですから…。」


料理は諦めろと公平から嫌味を受けただけだ。

結局は学校帰りに毎日のように公平に食べたい食事を伝えるという生活になる。

公平の手に負えない料理の場合は公平が国松家まで行きシェフに作らせて持って来る。

だけど今夜はハコと2人だけの時間が欲しい。

家の中を執事にウロウロされて落ち着きを失くしタイミングを失うとかお断りだ。


「出前でいい?」


ハコの意見を聞いてみる。


「要さん…、いつも出前なの?」


ハコが可哀想な人を見るような目をする。

茅野家のシェフは一流ばかり…。

自宅でまず雇い、腕を認められると世界中にあるホテルへと出されるレベルのシェフ達。

茅野家が所有するホテルのほとんどが五つ星に輝く経営戦略はそこにある。

そんな食事で育てられたハコからすれば僕の食生活が余りにも貧しく見えたのかも知れない。


「違うよ。普段は食べたいものを公平に言う。ハコもそうすればいい。でも今夜は公平に馬鹿にされたりしてハコとの時間を失うのが嫌なんだ。」


僕の本音を伝える。


「だったら、もっと早くに言ってくれればハコが作ったのに…。ハコは要さんの奥さんとしていっぱい練習をして来たんだからぁ。」


ハコが口を尖らせながらも甘い声を出す。

錬金術の練習をですか?

謎のパンケーキを思い出す。

迂闊に言いかけて言葉を飲み込む。

ここでご機嫌を損ねたらハコを可愛がる時間どころか夕食すら怪しくなる。


「今日はもう時間がないからピザかお寿司でも出前しようね。」


引き攣る笑顔をハコに向ける。


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