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不器用な夫
第13章 食事



そんな僕なのにいつだってハコは素敵な笑顔で笑ってくれる。


「すぐに、ご用意します。」


服の乱れを直しエプロンを付けたハコがキッチンへと駆けてゆく。

僕の妻…。

愛してる…。

藤原家に連れて行かねば…。

頭ではわかってる。

だが、母は京都が嫌いになるほど嫌な思いをした。

それをハコに味あわせる事に抵抗しか感じない。


「要さんっ!ご飯ですよ。」


ご機嫌でハコが僕を呼ぶ。

僕はゆっくりとダイニングのテーブルに着席する。

目の前に出されたのは狐うどん…。


「これが…、僕のご飯?」

「はい、要さんの大好物とお聞きしました。」


ハコは上機嫌で答える。

あの野郎…。

公平を呼び付けて叱りたくなる。

確かに嫌いじゃない。

学校の食堂でも3日に1度は狐うどんを食べる。

それは他のメニューがよくわからないからだ。

手早く簡単に食べられて、尚且つシンプルな味という理由だけで食べるうどんを勝手に好物にするなと言ってやりたくなる。

狐うどんを睨みつける僕にハコが不安な表情をする。


「お口に合うかしら?」


ハコを傷付けるのだけは嫌だ。

タダでさえ僕はハコを傷付ける。

1口、うどんを食べてみる。


「美味しい…。」


僕好みの温かさ、麺の柔らかさ、狐の甘み。

初めて作ったハコが完璧なものを作り上げてる事実に驚いた。


「良かったぁ…。公平さんが要さんの好みの味はうるさいってハコを脅すからドキドキしちゃった。」


照れた笑顔を見せるハコが僕と一緒に狐うどんを食べ始める。


「美味しい!ハコもやれば出来るじゃん。」


自画自賛に僕は笑う。


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