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不器用な夫
第13章 食事



公平はハコにでも作れる僕好みのうどんをハコに教えただけだ。

だから僕が狐うどんを好物だと言ったのだ。

ハコが作った狐うどんは確かに僕の好物になる。


「錬金術は成功したね。」

「錬金術じゃありません!」


2人で笑って食べる食事は温かくて美味しい。

ハコを笑顔にだけしたい。

僕はそう決心する。


「ご飯の後は?」

「僕は少し仕事をする。」

「要さん…、お仕事なの?」


ハコが寂しげに僕を見る。


「ごめんね、試験前は忙しいんだよ。だけど試験が終われば夏休みだからハコが嫌がってもハコの傍を離れないつもりだよ。」

「なら…、ハコは頑張って勉強するよ。」

「ハコが?」

「夏休みに補習とかやだもん。」


ハコがやる気を出しただけでも満足だ。

ハコがダイニングで試験勉強をすると言うから僕は仕事部屋へと籠る。

本当を言うなら仕事は出来ている。

よほどでない限り、家に仕事を持ち込むのは嫌いだから仕事部屋と言ってもただの書斎だ。

その書斎で僕はある人に電話する。

ハコには知られたくない連絡。

携帯の向こうで呼び出し音が鳴る。


『はい…。』


懐かしく優しい声がする。

涙が出そうな感覚に思わず口元を手で押さえる。


『元気かい?』


変わらない優しさ…。

その暖かみから春の陽射しを感じる人。


「ご無沙汰をしております。」


震える声で挨拶をする。


『結婚…、したとは聞いたよ。』


僕の要件を承知済みだ。


「清太郎さん…。」

『わかってるよ。辛いんだね…。君のお母様もここには2度と来たくないと仰ったから…。』

「僕は…。」


ハコを京都に連れて行くべきですか?

言葉が出ずに喉を詰まらせる。


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