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不器用な夫
第14章 捻挫



僕の妻は僕の学生としても努力を見せてくれる。

父がハコを選んだ理由がわかる気がする。

果歩は自分の家の為に僕を欲しいと考える。

森下先生も多分自己満足を得たいのだろう。

ハコは違う。

何一つ、不自由のない茅野家なのだから国松家に嫁ぎ苦労する必要などない。

無垢で純粋な少女。

何一つ、不自由がないからこそ僕の為だけを考える事が出来る少女。

ハコは選ばれた少女である。

満足な授業が出来た。

あのハコが優等生の答えを出したというだけでクラス全体に焦りが見える。

少々、点数が悪くともハコが居るという安心感で切り抜けて来た学生達はハコに負けるかもしれないと目付きを変えて僕の授業を受けていた。

ハコの発言に顔色1つ変えなかったのは元々主席である果歩くらいだ。

試験問題のレベルを上げるべきか?

問題の見直しをしてると


「国松先生…、お昼をご一緒しませんか?」


と森下先生が声を掛けて来る。


「すみません、これが終わってから行きます。」

「あら…。」


森下先生の寂しげな表情を見逃さない男が現れる。


「なら、僕とご一緒しませんか?」


爽やかな笑顔。

地味な僕とは違い、このお嬢様学校では王子とか呼ばれる男性教師。

北川先生…。

彼は社会で日本史の担当教員だ。

王子?

もう35を過ぎた男が?

僕は北川先生にほくそ笑む。

出身は田舎街の大名の子孫。

地元じゃ殿と未だに呼ばれる立場だろうが、東京に上がれば参勤交代時代と同じで田舎侍の扱いだ。

まして歴史に名を残す人物の子孫ならば、もう少しは良かったのだろうが無名の先祖に観光価値などは全くなく無意味な屋敷や城の相続に一族の財政は火の車という北川先生が僕は苦手だ。


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