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不器用な夫
第14章 捻挫
僕がこの学校に赴任してからの5年間、彼が自分の恋人だと僕に自慢した女性はすべてがこの学校の卒業生である。
まるで傾く大名家を支える為の女性探しをしているようにしか見えない北川先生には同じ教師として気分が悪くなる。
間違いなく言えるのは地味な僕とは違い、朗らかで爽やかな話し方をする北川先生は生徒達には人気の高い教師である。
いわゆるロン毛を明るい茶色に染めて、その髪を掻き上げては学生達に流し目を送る。
綺麗な顔立ちのイケメン教師…。
女生徒はキャーキャーと彼を取り囲む。
別に羨ましい訳じゃない。
単純に彼の本性を知ってるから苦手な人なのだ。
彼はハコや果歩が入学してすぐに
「国松先生が羨ましい。今年は学校1美少女と呼ばれる三浦君の担任なんですよね?」
と僕よりも先に生徒の品定めをした男だ。
しかも…。
「三浦君も魅力的ですが…、一番はやはり茅野家のご令嬢ですよね。今や世界的トップ財閥の1人娘なのですから。」
と次のターゲットはハコにしたいと宣言した教師だ。
北川先生が、こういう教師だとわかっている理事長だからこそトップクラスのご令嬢は毎年のように僕が担任になる。
どれだけ生徒に人気があろうと教師としては最低の男だとしか感じない。
ましてや、そんな北川先生と親しくして僕のフェロモンを浴びせれば僕の人生が破滅する。
僕からすれば北川先生は森下先生辺りと収まるのが一番良い事だとしか思えない。
この学校で教師になってからも、僕は人間関係を疎み地味で目立たない教師を勤めて来た。
今はハコだけが無事に卒業してくれれば、それで良いと思う。
煩わしい事を避けるだけの学校生活はハコと結婚する前から変わらないままだった。