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不器用な夫
第14章 捻挫



そうやってホッとしたのも束の間に僕の胸ポケットに収まる携帯が鳴り響く。

まあ…、常にマナーモードの学校専用携帯だから鳴り響くというよりもブルブルと震えるだけの携帯だ。


「はい…。」

『ああ、国松先生?』


電話の主は保健医の新巻先生だ。


「何か?」


保健室からの直通には緊張する。


『先生のクラスの子が階段から落ちて…。』


手短に新巻先生が要件を言う。


「誰が?」

『三浦さんです。』

「すぐに伺います。」


自分の教員室を出て早足で保健室へ向かう。

果歩が?

階段から落ちた?

もしも、怪我が酷ければ僕などを呼び出さずに病院へ向かうはず…。

ならば怪我は大した事はない。

だけど新巻先生は自分の手に負えないと判断をしたから僕を呼ぶ。

カウンセラーの資格を持つ新巻先生の手に負えない要件とは…?

保健室の扉をノックして慎重に開けると僕が挨拶をする前に新巻先生が保健室を飛び出して来る。

口元に人差し指を立て廊下の端へと僕を促す新巻先生の後をついて行く。


「三浦君の容態は?」


まずは怪我の確認をする。


「階段を踏み外しただけです。軽く捻挫をしたので保健室に来たのですが…。」


新巻先生が肩を竦める。

一体、何があったのか?


「軽いとはいえ捻挫は捻挫ですし、家族の誰かに学校へ迎えに来て貰えないかと私が聞いた瞬間から彼女が完全に口を閉ざしてしまって何を聞いても答えてくれないんです。」


かれこれ30分以上、果歩が保健室に居ると新巻先生がため息を吐く。

新巻先生の言葉の中に果歩が心を閉ざすキーワードがあった。

家族の誰か…。

多分、そこだと考える。


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