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不器用な夫
第14章 捻挫
三浦家の家庭事情までは保健医には知らされない。
保健医が行うのは健康管理とメンタルカウンセリング…。
メンタルでは恋愛相談をする子も居るが家庭事情は名家の恥となるから口を閉ざす子がほとんどだ。
そこを踏まえて新巻先生は僕を呼んだ。
「車の用意をお願いします。僕が三浦君を自宅まで送ります。」
学校の車で果歩を連れて行くしかない。
そう判断した僕に新巻先生が目を見開き驚愕の表情を見せて来る。
「国松先生がですか!?」
失礼な!
「免許はあります。」
「免許はあっても…。」
「ちゃんと運転は出来ますから!」
「ですが…。」
「新巻先生が保健室を離れる訳に行かないでしょう。なら僕が三浦君を連れて行きます。」
「運転は理事長か誰かにお願いすべきでは?」
「僕で大丈夫ですっ!」
職場の同僚にまで信用がない不器用な男…。
新巻先生は何度も僕に安全運転の念を押すと学校の所有する車の使用許可を取りに行く。
僕はその間に保健室に入り果歩との会話を試みる。
保健室にベッドは3つ。
その端のベッドの周りにあるカーテンが固く閉じられてる。
そのカーテン越しに果歩に声を掛ける。
「三浦君…、入るよ。」
カーテンをゆっくりと開ければベッドに座り足元に布団を掛けた果歩が居る。
「三浦君…。」
声を掛けても果歩は僕を見ようとしない。
キュッと口を結び、手が白くなるほどに布団を握り締めるだけだ。
「立てる?荷物はあるかな?僕が三浦君を家まで送って行くからね。」
一方的に果歩に説明をする。
「先生が?」
疑うように果歩が呟いた。