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不器用な夫
第14章 捻挫
「短大卒業までの学費などは母の実家が見てくれる約束なんです。でも…。」
果歩が言葉を詰まらせて大粒の涙をスカートに落とすのが見える。
車を停めてやるべきか?
不器用な僕には路上駐車という高等技術が備わってはいない。
「でも?」
果歩の話を促す。
「さっさと見合いをして安定した将来を早く決めろと言われました。母のようなみっともない出戻りは許さないと…。」
声を震わせて果歩が泣く。
短大ではなく、他の大学に行きたいと言ってた果歩は常に主席で頑張って来た。
その道は絶たれ、自力で生きる事も許されずに家の為に嫁に行けと宣言された。
「そうか…。」
僕は慰めてやる事すら出来ない不器用な教師だ。
それぞれの名家の問題については他家が口出すべき問題じゃない。
共存する為の婚姻ではあるが崩れかけた家と共になし崩しはお断りだと離婚する。
果歩は父親を恨むしかない。
当主として生き残る才能がなければ家というものは例え名家でも崩壊する。
国松家も人事ではないな…。
果歩の話に苦笑いをするしかない。
「ねえ、先生…。」
気丈な果歩が涙を拭いて僕を見る。
僕は事故は出来ないからと運転だけに集中する。
「この前、言った事…、覚えてますか?」
「何を?」
「どうせなら…、初めては先生がいいって話。」
「大人をからかうな…。」
「からかってなんかいません。私は本気で言ってます。よくわからない家に嫁ぐくらいなら先生に弄ばれた方がよほどいい…。」
「僕は子供には興味がない。」
「もう…、大人ですよ…。先生の子供だって産める歳です。国松家の妻の座は子を成した女が手に入れるんですよね。」
運転中の僕の太股をゆっくりと果歩が撫で始める。