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不器用な夫
第15章 相談
翌日はハコがコーヒーを入れてくれる。
僕の寝癖やネクタイの歪みも直してくれる。
ただ、一言も話さない。
学校ではハコを見かける事すらない。
果歩も今日は休むと連絡が来た。
放課後の学校で僕はため息を吐く。
定時までは仕事をして公平を迎えに呼ぶ。
「ハコは?」
「奥方様なら普通でしたが…?」
「僕には怒ったままだよ。」
「おやおや…。」
不器用な僕を公平が馬鹿にする。
そりゃ、公平にはハコも普通なのだろう。
公平はあくまでも執事。
僕は…。
ダメダメな夫である。
家に帰るのが怖くなる。
「ただいま…。」
「おかえりなさい…。お風呂からお先にどうぞ。」
やはり冷たいハコは健在だ。
「ねえ、ハコ…。」
僕の言葉にハコは背を向ける。
どうすればいい?
早く帰って来ても、風呂を済ませても、食事を済ませても、やはりハコは不機嫌なまま…。
寂しいよ…。
ハコにそう言えば良いだけだ。
それを言うタイミングが掴めない。
夜はずっとハコが僕に背を向ける。
朝は起きたらハコがベッドに居ない。
ハコとこのままなのは耐えられない。
いつものようにハコが僕のネクタイの歪みを直すとすぐにでも僕から背を向ける。
「ハコっ!」
僕はハコを捕まえる。
「遅刻しますから…。」
胸に突き刺さる冷たい声…。
ハコは何に怒ってる?
それすら僕にはわからない。
「遅刻してもいいから話し合おう。」
「何をですか?」
「ハコが怒ってる理由…。」
「別に怒ってませんから…。」
「辛いんだよ。ハコが僕を見てくれないのが…。」
ハコの背後から腰を引き寄せてハコの髪を避けて、その細いうなじにキスをする。