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不器用な夫
第15章 相談



教員室では、いつものようにセーラー服姿の少女が僕を待っている。

その少女はやたらとご機嫌だ。


「おはようございます…、先生…。」


頬を紅潮させて果歩が笑顔で僕を見る。


「おはよう、もう足は大丈夫か?」


果歩の体調の確認をしながら戸棚の鍵を開けてやる。

果歩が僕の腕に手添える。


「ええ、先生…。」


その手を振り払い僕は自分の机に行く。


「冷たいのね?」

「今日の出席は?」

「泉さんが欠席です。遅刻はありません。」


泉…。

この子は学校にギリギリでしか出席しない。

ハコと同じで家族が海外に居るからだ。

果歩はゆっくりと僕の机に寄って来る。


「用が済んだなら出て行ってくれ。」


僕に期待する顔を向ける果歩に言い聞かせる。


「本当に冷たい先生…、でも…、そこが好き…。」


果歩の手が僕の手に触れる。


「出て行けと言っただろ?」


何故か果歩と見つめ合う。

果歩はただ、うっとりとした目で僕を見る。


「先生…。」


果歩が掠れた声で呟いた。

瞬間…。



ガンッ!



と乱暴に教員室の扉が開く。

僕のか弱い心臓がビクンと縮む気がする。


「失礼致します…。」


冷たい声…。

扉から入って来たのは僕の妻…。

背筋に冷たいものが流れ落ちる。

まさか果歩がこの前の事でハコに余計な自慢をしないだろうかと心臓の鼓動が荒くなる。


「ど…うした?か、茅野君…?」


呂律が回らない。

果歩が一瞬、ハコに対して嫌そうな顔をしたのは見逃さない。


「先生…、ちょっと忘れ物をしたので…。」


淡々とハコが答える。

忘れ物?

本当か?

僕は疑うようにハコを見る。


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