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不器用な夫
第16章 背徳



ベッドに入ればハコが目を閉じる。

まだ幼い無邪気な顔で眠る妻…。

それを裏切るやり方でしか妻を愛せない夫…。

ハコとちゃんと話し合わなければ…。

こんな暮らしなんかいつまでも続く訳がない。

背徳の重さに押し潰さる気がした。


「要さん…。」


ハコに揺り起こされた。


「もう…、朝?」

「大丈夫?」


ハコが僕を覗き込む。

その唇に軽く触れるだけのキスをする。

身体を起こし頭を振る。

不味いな…。

ぼんやりと考える。

身震いをしてベッドから出る。

コーヒーを飲み、いつものようにハコと家を出る。


「ねぇ、要さん…、本当に大丈夫?」


ハコが心配する。


「大丈夫だよ…。」


ハコには笑顔で学校に送り出す。

だが実際は…。


「坊っちゃま…、今日は休まれた方が…。」


公平までもが僕の心配をする。

しかも公平は僕を見ずに言う。


「そんなに…、酷いか?」

「かなり…。」


車の窓を開けて公平が息をする。

僕の身体から漏れでるフェロモンに公平が興奮した顔をする。

コントロールが上手くいかない。

公平にギリギリまで疼かされた身体が男を求めて僕の意志に逆らいフェロモンを放つ。

心はハコで満足したはずなのに…。

欲求不満で満たされない身体が疼き続け僕の言う事を聞いてはくれない。

下品な話だが、今の僕はフェロモンを垂れ流し男を求めて彷徨う娼婦のような存在だ。

この欲求不満を抑え込む事が出来なければ迂闊に人前に出る行為は避けるべきだとはわかってる。

しかしながら、学校は試験前…。

今だけは簡単に休む訳にはと考える。

基本的には女子高なのだから僕がフェロモンを垂れ流しても授業には差し支えはない。


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