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不器用な夫
第17章 罪悪



「それが難しいならさ、例えば国松先生のご両親は経験者な訳だし、先輩としての助言を貰うとか、後はやっぱり専門家に相談すべきだと私は思うよ。」


新巻先生が僕の肩をポンポンと叩く。

両親に…。

過去の傷を抉るような話を母に出来る訳がない。

専門家…。

国松家の専門家は清太郎さんか曽我の事だが、イかせ屋に頼るにはハコとの話し合いが必要になる。

今はまだその時じゃない。

ひたすら新巻先生の意見に首を振る僕に新巻先生が渋い顔をする。


「そのうちに体調を崩す程度では済まなくなるよ?てか、その体調も自分で治せるの?」


医師として新巻先生が心配をしてる。


「なん…とか…なります。それよりも…。」


僕は担任であり、僕のクラスの生徒に終礼を行って帰宅させる仕事がある。


「国松先生のクラスの委員長は三浦さんだっけ?彼女に任せたらいいの?」

「お願いします…。」


試験前だから大した連絡事項はない。

ただ生徒達が帰るまでは僕の身動きが取れないというだけだ。

迂闊に学校では教師が倒れる姿は見せられない。

ましてや、このお嬢様学校では教師が咳き込んでたというだけでウィルス感染の心配はないのかと保護者からの問い合わせが来たりする。


「とにかく、後でもう一度来るから国松先生はそのまま休んでて下さいね。」


往診を済ませた新巻先生が教員室から出て行く。

机の上に突っ伏したまま目を閉じる。

ハコのところに帰りたい。

心はハコの元へと走るのに、身体がそれを拒否するかのように動かない。

多分、1時間くらい眠ってた。


「ちょっと、本当に大丈夫?」


新巻先生の声で目が覚める。


「少しは…。」


楽になった。

帰って、ゆっくりと眠れさえすれば…。

ぼんやりとそう思う。


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