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不器用な夫
第17章 罪悪
あの頃と同じように僕の額に冷たい手が当てられる。
「ここに居るから…、傍に居るからね…。」
か細い声がする。
その手と声に安心感だけを感じて深い眠りに落ちた。
目が覚める。
「要さんっ!」
泣きそうな表情をする妻にキスをする。
「今は何時?」
掠れた声しか出ない僕にハコが冷たい水をくれる。
「もう夕方だよ。要さん…、玄関で倒れた。」
歯を食い縛り、涙を堪えるハコに胸が痛くなる。
ハコには何かと心配性なところがある。
真っ直ぐで必死な分、不安になると驚くほど僕の心配ばかりする。
「そうか…、公平は?」
「要さんをベッドに運んでくれたら、すぐに帰っちゃったの。」
公平はフェロモンの放出が止まらない僕から逃げただけだと判断する。
「ちょっと…、ハコに頼みがある。」
「ハコに?」
「今日は金曜日だから国松の家で食事をする日だけど今夜はハコだけで行って、出来たらそのまま泊まって来てくれないか?」
「ハコだけ!?」
「うん、僕が行かないときっと母さんが凄く悲しむからね。でも今夜の僕は公平と病院に行く必要があるし、こんな姿を母さんには見せられない。」
「病院に…?」
ハコが悩む。
僕の傍に居たいのだろう。
でもそれは僕の興奮が治まらずにますます悪化する事になるだけだ。
「明日、必ずハコを迎えに行くから今夜だけはそうしてくれないか?」
「本当に…、ハコだけで行かないとダメ?」
「僕の代わりにハコが母さんの相手を努めてくれないか?ハコが僕の大切な妻だから…。」
「お義母様のご相手を…?」
ハコがきゅっと唇を噛む。
妻としての決心を決めたように見える。