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不器用な夫
第18章 学生
僕自身もさすがに緒方の申し出はお断りだと思う。
愛すると決めたハコだけでも僕の手に負えてない。
そこに果歩まで絡む事になれば、ますますハコを不幸にする。
「お断りして下さい。」
当然、父もそのつもりだと僕は拒否の意志を示す。
なのに…。
「国松の答えとしては恋愛については自由だとしか緒方には返せない。」
と苦味を潰したような顔で父が言う。
「父さん!?」
「愛人が子を成せば、その愛人が本妻になる。それが国松のやり方だとわかっているはずだ。」
「そんな…。」
緒方と契約を交わす気はない。
取り引きもしない。
だが僕と果歩が恋愛をするのは自由であり、僕がハコには無理と判断した藤原家に果歩を連れて行けば果歩が国松の母として収まる結果になる。
過去にもあった事例…。
本妻に子を成す事が出来ないのならば愛人に…。
まさか父から、そんな形で急かされるとは思いもよらずに僕は動揺を隠せない。
「父さん…。」
「まだ時間はある。しっかりと考えなさい。何が国松にとって一番良い方法なのかを…。」
母を犠牲にした父からの言葉…。
ハコを愛してるならハコの心を犠牲にしろ。
それが先輩である父からのアドバイス。
僕にどうしろと言うのだ?
不器用で地味なだけの男に何が出来る?
ハコを幸せにしてやりたくともハコを不幸にする事しか出来ない。
ならば一層の事、既に不幸な果歩を犠牲にするしかないのか?
果歩にとっては、子さえ孕めば幸せに繋がる。
僕は果歩を愛せるのか?
答えは否だ。
果歩にはそんな気持ちが湧かない。
まだ少女だというのに僕を利用価値のある男としてしか見ない果歩に愛情など感じない。