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不器用な夫
第19章 誠意
その笑顔にドキドキする。
ハコが僕に触れるだけで僕は舞い上がり自分を見失うような気がする。
しっかりしなければ…。
小さなハコを抱き締めて眠った。
試験が始まった。
僕はひたすら時計を睨む。
さすがに試験日は欠席者が居ない。
ハコは落ち着いた顔で試験を受けている。
その斜め前の席に座る果歩も集中している。
僕が担任を受け持つクラスは比較的に成績が良いから安心する。
何かと忙しいお嬢様達だが、お嬢様である以上は恥ずかしい学歴が許されない事を早めに理解している子が多く、エスカレーターの短大に向けて合格ラインだけは必ずキープする。
その為に得意、不得意はあるものの欠点になる酷い成績の子は稀である。
ハコも古典が苦手だったが欠点だけは免れてた。
今回の定期テストでは、僕の為にと苦手な古典も克服してくれた。
次は僕がハコに誠意を見せる番だ。
そんな思いで試験を受けるハコを眺め続ける。
試験の初日が終われば森下先生が僕の教員室にやって来る。
今日は2年生に古典のテストがあったから…。
その答案を持って来てくれた。
「僕が職員室に取りに行ったのに…。」
「ついでがあったからお持ちしたまでですわ。」
森下先生がとびきりの笑顔を僕に向ける。
火曜日から土曜日までの5日間で全科目のテストが実地される。
1年生の古典は水曜日…。
その答案の採点作業があるから僕や森下先生などの教師は定時まで帰れない。
早く済ませて帰りたい。
なのに森下先生がぐずぐずと僕の教員室に居座って動かない。
「森下先生、ご自分の採点はいいのですか?」
嫌味を込めて聞いてみた。