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不器用な夫
第19章 誠意
「ええ、今日は英語は無かったので…、明日からは大変ですけれど…。」
笑顔を貫き、サラリと僕の嫌味をかわす森下先生にため息が出る。
やはり女性は苦手だ。
得に森下先生のように押しの一手で向かって来る女性は本当に苦手だと思う。
「だから今日は国松先生のお手伝いをするつもりでここに来たのです。コーヒーでも何でも必要ならこの私に言って下さいね。」
ニコニコとして僕の手を両手で握る森下先生からどうやって逃げたら良いのかとか考える。
下手にコーヒーを頼めば、そのままこの部屋に居座るつもりだと感じて背筋に寒気がした。
「えーっと…、出来たら1人にして貰えませんか?」
「あら?」
「僕…、1人で静かに集中しないと採点ミスが増えるんですよ。」
「なら、静かにしてますから…。」
僕の言葉が通じない森下先生が予備の椅子に座り自分の私用の携帯を弄り出す。
学生に携帯禁止をしてる学校に教師が私用携帯を持ち込む事に僕は反発したくなる。
「ねえ、国松先生。先生の携帯の番号を教えてくれませんか?」
静かにする約束も反故にされた。
「番号ならご存知ですよね?」
「それは学校用のですよね?国松先生が個人で持ってる分ですよ。」
「個人の分は学校には持って来てませんから。」
「でも、番号はわかりますよね?」
冗談じゃないと思う。
休日に森下先生から無意味な電話が来たらハコが嫌な顔をするに決まってる。
「個人用の番号は覚えてません。」
「嘘ーっ?」
「本当です。僕は滅多に携帯を使いませんから。」
携帯なんか公平を呼び出す時以外に使う機会がない。
そもそもアプリだメッセージだという機能を使いこなせる器用な男でもないのだから…。
これ以上の森下先生の邪魔はお断りだと思う。