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不器用な夫
第19章 誠意



なんだかんだで30分は予定よりも遅れてる。

僕はハコのところに帰りたいのに…。

運命がそれを拒否してるような気がする。

僕はハコのところに帰ってはいけないのか?

くだらない事を考える自分に笑う。

その笑いは玄関を開ければ消える。


「ハコ…?」


またしても小さな少女が玄関先で膝を抱えて踞っている姿に驚いた。


「おかえりなさい…。」


泣きそうなハコが僕に手を伸ばす。

ハコを抱き上げてキスをする。


「そんなに心配しなくても…。」

「辛いの…、1人になると嫌な事ばかり考えちゃう。」

「嫌な事?」

「要さんが帰って来なくなるかもって…。」


胸に痛みが走る。

果歩の事を考える。

ハコに秘密が多過ぎる。

その秘密がハコを不安にさせている。

わかってて僕はハコに何も話さない。

そっとハコの頬にキスだけをする。


「何が起きてもハコのところに必ず帰るから…。」

「絶対に?」

「絶対に…。」


根拠の無い約束。

ハコが妊娠をしない限り、その約束が翻される事をハコは理解している。

ハコが僕のところに来るまではどんな生活をしてたのかが気になる。

異常なほどまでに僕の帰りを気にするハコ…。

食事をしながらハコに聞いてみた。


「ずっと…、1人だったから…。」


そう言ってハコが寂しく笑う。

ハコが物心がつく前からハコは1人だった。

忙しい両親は世界中を飛び回る。

年の離れた兄はアメリカに居たがアメリカ中を飛び回りやはりハコの傍には居てくれない。


「それにね…、時々、皆んなが日本語で話すの。」


アメリカ生まれで育ったハコだけに、わからない言葉だったらしい。


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