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不器用な夫
第19章 誠意
「10歳の時に白鳥が来てハコにも日本語を教えてくれたの。」
そして中学からは日本の学校に行けと言われ茅野家が経営するホテルで一人暮らしが続いた。
「白鳥も居たし、国松のお義父様も毎日一緒に食事をしてくれたから寂しくはなかったですよ。」
ハコが気丈にも無理矢理な笑顔を作る。
寂しくなかったはずがない。
まだ幼い子供がずっと孤独を味わって暮らして来たのだから…。
その為に無邪気なだけのハコに育った。
結婚すれば僕が傍に居ると期待してるハコは僕の帰りを必死に待つ。
母のように…。
帰らぬ夫を信じて待つ妻にハコがなる可能性がある。
そのハコを裏切ってばかりの僕…。
ハコの手を握る。
「試験が終わったら…、2人で出掛けないか?」
ハコにそう提案する。
「2人だけで?」
ハコが目を輝かす。
僕が好きな生き生きとするハコ…。
無邪気で可愛いだけのハコが見れると嬉しくなる。
「うん…、2人だけで…。」
「どこに…。」
「そうだな…、京都は?今の季節なら祇園祭をやってるよ。」
ハコを京都へ誘導する。
「んー…。」
何故かハコが考える。
「京都は嫌か?」
「祇園祭とか浴衣を着たくなっちゃう。初めての浴衣はお義母様と着るって決めてるの。」
なんとなくがっくりとした。
えーっと…。
京都には藤原家があるんだよ。
そう言う前にハコが食事の席を立ち上がる。
「その前に試験を済ませなきゃ。ハコはもう寝ますから要さんも早くお風呂に入って寝て下さいね。」
不器用でアタフタする僕に気付かない天然のハコがさっさと寝室に姿を消す。
ダメだこりゃ…。
がっくりと肩を落とす。