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不器用な夫
第20章 秘密



果歩は優秀な生徒ではある。

しかし規則を違反するなどの行為を繰り返すようなら教師としても果歩に甘い顔はしてられない。


「当たり前です。試験期間中の教員室への出入りは禁止されてるとわかってますよね?」


試験中は果歩は朝の日課であるチョークを取りに来てない。

試験中にチョークを使う事がないのとテストの答案や成績表が教員室に置いてあるから生徒が出入りして余計な疑いをかけない規則になっている。


「試験なら終わりましたよ?」


くすくすと果歩が笑う。


「まだ試験中だよ。」

「でも古典の答案はもう返って来たし、先生と2人っきりで話せる場所はここしかないもの。」


机に座る僕の前まで果歩が来る。

果歩が僕の手を握る。


「要件は?」

「わかってるくせに…、先生に一目でも会いたかっただけよ。だって私は…。」


愛人だから…。

果歩がそう言い切る前に教員室の扉がノックされて果歩が顔を歪めて1歩下がる。

さすがに校内でおかしな噂になるのは果歩も立場的に困るらしい。


「失礼致します。」


入って来たのはハコだ。

僕の心臓が小さく縮む。

ハコが今にも泣きそうな顔をして入って来たからだ。


「茅野君…、教員室の出入りは禁止だよ。」


今は果歩の手前、そう言うしかない。

なのに泣きそうなハコは


「果歩ならいいの?果歩なら許されるの?」


と繰り返す。


「茅野君…?」


ハコは家に帰れば話が出来る。

いや、早く帰ってやった上でハコとは話す事が山ほどあると思う。

2人とも教員室から出て行けと言う前に、更に教員室の扉が開く。


「国松先生?」


顔を覗かせたのは森下先生だ。


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