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不器用な夫
第20章 秘密



今日は厄日か?

うんざりとした。

押しかけ愛人と妻、よくわからない同僚の三つ巴に僕はため息を吐く。


「貴女達、何をしてるの?試験期間中の教員室への生徒の立ち入りは禁止されてるでしょ。」


ひとまず森下先生が教師風を吹かせて果歩とハコを叱る姿にホッとはする。

それでも果歩がくすりと森下先生を嘲笑う。


「生徒は許されなくても教師ならなんでも許されるって勘違いしてるのも間違いですよ。」


果歩がそう言って教員室の扉に向かう。


「ちょっと?それはどういう意味?」


森下先生が眉を上げる。


「うちの学校には英語の発音すらろくに出来ないのに男性教員のお尻を追いかけるのだけは上手い教師が居るって話ですよ。行こうハコ…。」


そんな言葉を残し、果歩が泣きそうなハコの手を握ると教員室からは2人で鮮やかに出て行った。


「ちょっと、待ちなさい!」


ヒステリックに森下先生が叫ぶ。

僕から見る限り果歩の方が1枚は上手だと思う。

お嬢様な森下先生だが、教師として努力するという姿を見た事がない。

英語の発音が悪いと前から生徒の間では噂になっている事実は否定が出来ず、僕や北川先生とばかり昼休みにランチをしてれば男の尻を追いかけてるだけの教師と生徒から言われても仕方がない。

生徒に誤解を招く行為をするな。

それがこの学校の教師のルール。

お嬢様達は神経質であり、噂話が大好きだ。

こちらが迂闊に隙を見せれば例え教師だとしても容赦なく攻撃して来る家柄の娘ばかりなのだと森下先生もそろそろ自覚すべきである。

当然のように家柄での格の違いは教師と学生の間にも存在する。

そんな学校で教師風を吹かせる森下先生を果歩のように優秀な生徒は馬鹿にする。


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