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不器用な夫
第20章 秘密
「だから…、こんな遣り難い学校って嫌なんです。」
森下先生が常識を盾にして学校批判をする。
この段階で森下先生を僕は卑下するしかない。
森下先生自身がこの学校の教員である限り教師が学校批判を口にするなどとんでもない事だ。
嫌ならこの学校を辞めて他の学校に行くべきであり、僕に同意を求めるように学校批判をされても迷惑だとしか感じない。
「それで森下先生のご要件は?」
さっさと要件を聞いたら森下先生にはご退出を願いたい。
「ああ、国松先生はこの後はお時間がありますか?」
満面の笑みを浮かべて森下先生が僕を見る。
「時間?」
「北川先生や他の先生方と食事にでも行こうって話が出てるんです。」
要するに試験が終わった打ち上げを教師でやろうという学生感覚な誘いだ。
「お断りします。」
僕はハコのところへ帰りたい。
しかも最後に見たハコが泣きそうな顔だった以上は急いで帰ってやる必要がある。
「職員室じゃ国松先生って付き合いが悪いってなってますよ。」
森下先生が眉を顰める。
付き合いが悪くて何が悪い?
無闇に付き合いをせずに済むから教師という職を選んだのに、私的な付き合いを強要されても迷惑だ。
「家の事が色々とあるんですよ。」
今週はハコが試験中だからという事で国松の実家にも帰ってない。
ハコさえ良ければハコと藤原家に行く話をして国松の家にも行きたいと考える。
個人的ではあるがやる事が多過ぎて不器用な僕は他の教師との付き合いにまで気が回らない。
「ねえ、国松先生…、出来れば私の為に一緒に来て頂けませんか?」
森下先生が僕の手を握って来る。