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不器用な夫
第20章 秘密
果歩といい、森下先生といい…。
お嬢様ってのは自分の願望を押し付ける時は何故か僕の手を握る。
その手を振り払い
「森下先生の為ってなんですか?」
と聞き返す。
手を振り払われた森下先生が嫌な顔をする。
膨れっ面に変わりながらも僕を上目遣いで見る。
「最近…、北川先生がちょっとしつこくて…。」
「北川先生が?」
「何か勘違いをさせたみたいで、自分の女だみたいな態度をするんです。」
「それはそれは…。」
そんなに嫌なら北川先生が参加する集まりを拒否すればいいだけだ。
その尻拭いを僕に求められても不器用な僕は変に巻き込まれるだけで痛い思いをするだけだ。
「そういう事は新巻先生に相談すれば直ぐに解決してくれますよ。」
人事の拗れは新巻先生へ…。
うちの学校の暗黙の了解。
彼女は既婚者でカウンセラーで理事長の親族でもあるから学校側からの信頼も厚い。
「新巻先生に?」
森下先生が目を細める。
教師がくだらない相談を新巻先生にすれば学校側から解雇を言われるのは森下先生の方になる。
森下先生は自分がくだらない相談を僕にしている事実を突き付けられて嫌な顔をする。
「さっきも言いましたが僕は忙しいんです。お疲れ様でした。」
目を見開く森下先生を無視して教員室を出た。
ハコはもう帰ったのだろうか?
急いで僕も帰る必要がある。
公平が待つ待ち合わせ場所に向かって歩く。
車に乗るなり公平に聞く。
「ハコは?」
車を出しながら公平が呆れた顔をする。
「知りませんよ。奥方様は茅野家の車で帰って来るのですから。今日はまだお会いしておりません。」
いつもなら帰りが遅い僕を迎えに来るまで僕の部屋で公平はハコと居てくれる。
今日は僕も午前中で仕事が終わるからと公平は真っ直ぐに僕を迎えに来た。