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不器用な夫
第20章 秘密
傷付いたハコを強く抱き締めてやるしか出来ない不器用な夫…。
惨めで情けない自分を呪う。
「離してよっ!」
ハコが僕を振り払おうとして踠く。
「嫌だ…、ハコを愛してる。」
「嘘は止めてっ!」
「嘘じゃない。本当にハコを京都に連れて行くつもりで覚悟をしてたんだよ。」
「京都?ハコが行きたくないって言ったから?だから要さんはハコじゃ無理って決めたの?」
「そうじゃないよ。ハコが大切だから京都に行こうって言ってるんだよ。」
「だからハコは行きたくないって言ってるんだから果歩と行けばいいじゃないっ!」
「はぁ!?」
なんとなくハコと話が噛み合ってない気がして来る。
「なんで…、ここで三浦君?」
いくら天然ハコでも関係のない果歩が出て来ると僕も話が混乱する。
ハコは今更、何を言うと言わんばかりに涙目で僕を睨み続ける。
「ハコじゃ要さんの奥さんになるのは無理だって判断したから果歩に乗り換えるつもりなんでしょ。」
「ちょっと待て…、ハコ…。それを三浦君が言ってたのか?」
「違うわ。果歩はハコには何も言わない。聞いたのは白鳥からよ。」
へーへー、白鳥さんね。
また余計な事をべらべらと…。
「ハコは…、一体、白鳥さんから何を聞いた?」
段々と冷静になる自分を感じる。
逆にハコはそれが気に入らないらしい。
「とぼけなくてもいいよ。財界じゃ凄い噂になってるって…、緒方の娘が次の国松の子を産むって噂。」
やられた…。
父が聞けば激怒するに決まってる。
「その緒方の娘が果歩の事だって…、白鳥から私は大丈夫なのか?って何回も聞かれたわ。私なんか独りぼっちがお似合いの子だって要さんも思ってるんだ。」
わぁんわぁんと子供のようにハコが目に手を当てて泣き出した。