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不器用な夫
第20章 秘密



怒るハコには悪いが、その姿が可愛くてついつい僕は笑ってしまう。

僕が笑えば笑うほどハコは怒って涙を流す。

それだけ僕を愛してくれる女の子をそんな簡単に捨てたりはしないのにハコはずっと涙を流す。


「ハコなんか…。」


ヒックヒックと泣きじゃくり声にならない声を出す。


「愛してるよ…。」

「嘘はやだ…。」

「本当に愛してる。」

「ハコなんかじゃ…。」

「ハコが可愛いんだよ。」

「違うもん…。」


ハコが落ち着くまでハコの髪を撫でていた。


「要さん…。」

「ハコだけを愛してる。三浦君の事は説明出来る範囲だけの説明をしてあげるから…。」


少し落ち着いたハコを抱き上げてリビングに連れて行きソファーに座らせてコーヒーの用意をする。

ハコは砂糖たっぷりにミルクたっぷりの方が良いのだと最近知った。

ハコ好みのコーヒーと僕のコーヒーを用意する。

ハコはもうお客様ではなく、僕の妻としてここに居るという事を理解させてやりたい。


「さて…、ハコ…、三浦君についてハコはどのくらい知っている?」


あくまでも教師としてハコに聞く。

生徒の個人情報をべらべらと話す事は出来ない。


「果歩の事…?ご両親が離婚して果歩が緒方の家に引き取られたって事は果歩本人から聞いたわ。」


ハコが大きな瞳にまだ涙を浮かべながらも、必死に僕と話をする。

僕はハコが不安にならないようにハコの肩を抱いてハコの話を聞いてやる。


「その緒方だが…、確かに三浦君を国松の妻にしたいという申し出があった。」


僕は事実をハコに話す。


「だから…、もう…、ハコは要らないんだよね。」


再びボロボロと大粒の涙を流すハコの頬に何度もキスをしてハコの目を覗き込む。


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