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不器用な夫
第21章 会話
「着いたよ…、ハコ。」
助手席で眠るハコを起こす。
ハコがゆっくりと目を開ける。
辺りの景色を見渡しながら、ハコの瞳が最大にまで見開かれる。
「こ…こ…は…?」
ハコが少し怯えた顔をする。
そのハコの頬にキスをする。
「僕が所有するマリーナだよ。」
車から降りて荷物を下ろし、ヨットハーバーの桟橋に向かって歩き出す。
「要さんが?」
ハコが僕の後ろを歩きながら聞いて来る。
「うん、そう。このマリーナのオーナーは僕。前は爺さんの持ち物だった。」
「お爺様の?」
「そうだよ。」
一番奥に停留するクルーザーに荷物を持って乗り込みハコを乗せてやる。
「これが僕の船。」
「要さん!?船を運転出来るの!?」
失礼な…。
「免許はあります。」
「免許はあっても…。」
またもや不器用な僕に船の操縦は不可能だという疑いの視線をハコから浴びる。
どうせ僕は不器用で信用がありません。
口答えを諦めて、クルーザーを港に留める舫いを外し操縦席へと向かえば、ハコは大人しく僕について来てくれる。
エンジンを掛けて船の状態のチェックをしてから、ゆっくりとマリーナから船を出す。
「本当に運転が出来るんだ。」
ハコが目を丸くする。
車と同じで超安全運転なのは変わらないが道路とは違い障害物がない分、船の方がスムーズに走らせる事が出来る。
「爺さんに教わったからね。」
「お爺様に?」
「祖父は海洋学者だった。」
誰にも話した事のない話をハコには話をする。
祖父は一応、博士号を持つ海洋学者ではあった。
但し、大学などの研究室には所属せず、毎日毎日、この船に乗る変わり者の学者だ。