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不器用な夫
第21章 会話



午前中に食事をするとなんとなく胸焼けがする。

それでもハコが食べさせようとする以上は拒否も出来ずに少しだけは食べてみる。


「へぇ…、このグラタン…、本当に美味しいね。」


母が平凡だとケチを付ける料理人なのに、やはりプロはプロだと感心する。


「でしょ?うちのホテルでも通用するよ。」

「けど母さんは平凡としか言わないよ?」

「もしかして…、お義母様って美味しくないものを食べた事がない人なんじゃないの?」


なるほど…。

思えば曽我も立派な京懐石よりもラーメンが食べたいとか言っていた。

つまり母は一流が作るもの全てが当たり前で平凡と感じてるだけなのに30年以上もシェフはムキになって我が家で料理人をしている事になる。

それを知ってハコと2人で吹き出した。

ただ2人でくだらない話をして笑い合うだけの時間。

ハコの知らない国松家の話を僕がすれば僕が知らない茅野家の話をハコがする。

そうやって夫婦としての会話をする事でハコとの距離を僕は縮めていく。


「兄様とは15も離れてたもん。」


ハコが口を尖らせる。


「15も?」

「そう…、だから要さんとの歳の差の方がハコには全然近いよ。」

「近くはないだろ?」

「近いです。兄様って言っても大学に入ったら寮に入っちゃったし、アメリカの永住権を取るからって軍にも行ってて、何年も居なかった人だもの。」

「だから…、ずっと白鳥さんと?」

「白鳥だって茅野家に永久に居る人じゃないわ。でも要さんとの結婚は違うでしょ?夫婦が永遠に一緒に居るって誓い合うのが結婚だよね?」


ハコは自分の傍に永遠に居てくれる人を求めてた。

僕は自分の心を埋めてくれる誰かを探してた。

だからハコと繋がりたいと僕は望む。

ハコを夫として愛し、繋がりたいと…。


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