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不器用な夫
第3章 学校
もしハコに僕の嫡子を身ごもる気配がなかった場合は速やかに離婚の手続きが遂行される。
それが国松家の婚姻だ。
つまり花嫁は誰でもよく、僕の子を孕む事だけが重要視されるという婚姻を既に理解をするハコはハコなりに必死だ。
16歳という少女が夢見る幸せな花嫁像にはほど遠い国松家の嫁。
その為、万が一僕と離婚をしてもハコの傷が深くならないようにとこの結婚は伏せられたままになる。
ハコが誰かから祝いの言葉を貰える日が来るとしたならば、それはハコが国松家の嫡子を産み、その子が6歳まで成長した時となる。
だから僕はハコを大切にしてやりたいと思う。
不器用な僕に大恋愛は無理だとしても僕なりにハコを大切な存在として扱いたいと望む。
僕の妻なのだから…。
僕は何度も自分にそう言い聞かせて自分専用の教員室へと向かう。
扉を開ければ白いセーラー服の少女が目に入る。
「先生、遅いよ。」
挨拶すらなく、少女が僕に不満を言う。
「理事長に呼ばれてたんだ。」
僕はそう言いながらガラス戸が付いた戸棚の鍵を開けてやる。
三浦 果歩(かほ)…。
うちのクラスの委員長であり優等生の彼女は毎朝僕の教員室に来て新しいチョークを持ち出すのが日課になってる。
「理事長に?先生、なんかやらかしたの?」
「そんな事はないな。」
「国松家だもんね。」
大人びた顔で果歩が僕を見る。
学校一番の美少女。
中等部を主席で卒業した成績優秀な生徒。
僕はハコの成績表のファイルをチラ見しながら、ため息を吐く。
平凡な成績はまだ許せる。
僕の教科担当の古典が赤点スレスレというハコに今夜は家に帰ったら少しばかりの説教をしなければとか考えてしまう。