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不器用な夫
第22章 時間
それは肉体だけでなく心を繋ぐ手段だった。
僕はまだ僅かではあるがハコと心が繋がったと思うだけで満足だ。
港に戻り、車に乗り換えて家に帰るまでハコはずっと僕の腕に小さな手を添える。
何があっても僕の傍に居るのだというハコの気持ちを感じる。
それが確認を出来た夏の始まり…。
藤原家に行くまでハコとずっと笑い合える夫婦で居たいと切に願う。
その翌日からはいつもの僕とハコだった。
「ハコっ!ブラジャーが廊下に落ちてる!」
「あれー?その前に要さんのコーヒーカップが見つからないの…。」
朝からバタバタとする生活。
ハコが来てから賑やかになった僕の家。
そして、それが幸せだと知った僕はハコが手放せずにキスをする。
「遅刻しちゃう。」
「ブラジャーを忘れるな。」
ケタケタと笑うハコが好きだ。
「今日から早く帰れるの?」
朝からご機嫌のハコが聞いて来る。
「僕が帰れるのはいつもの定時です…。早く帰れるのは学生だけ…。」
今日から学生は2時間授業…。
その後は三者面談…。
木曜日までがその日程で金曜日には終業式。
普通の学校よりも早く夏休みに突入するお嬢様学校は9月も半ばまでが夏休み…。
この夏休みで海外の学校に入学し直す子も少なくないお嬢様学校は2ヶ月という長い夏休みが当たり前のように設定されている。
「つまんない…。」
ハコが口を尖らせる。
1人で居たくないハコだから
「公平と買い物にでも行けばいい。」
と公平をハコに付けるしかない。
それでもハコの中では公平はあくまでも執事であり、家族とは違うからと寂しがる。
「金曜日は早く帰れるから…。国松の方には早めに行こう。新しい浴衣が届いてるはずだよ。」
そこからは夏休みで僕はハコとはずっと一緒に居てやれる。
「土曜日が屋形船?」
「そう、だから…、今週だけ乗り切ろう。」
そう約束を交わしてハコと家を出る。