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不器用な夫
第22章 時間
ハコはいつものように茅野家の車に乗り、僕は公平が運転する車に乗る。
「暑くなりそうだ。」
7月が始まる。
「夏ですね…。」
公平がエアコンの設定温度を変える。
汗が吹き出すだけで体内に多少は残るフェロモンが流れ出す。
その為に公平は常に僕が快適な温度を設定する。
「三者面談の間はうちで出来るだけハコと居てやってくれ。」
「御意…。」
ハコとの絆を深めた今は主としての自覚を僕は持つ必要がある。
公平との関係はあくまでも主と執事。
その関係で生じる問題をハコは目をつぶると言ってくれてる。
ハコに対する後ろめたさが無くなっただけでも気が楽になる。
そんな風に浮かれる僕に新たな秘密が生まれるとは思いもしてなかった。
何はともあれ…。
三者面談である。
そこは、やはりお嬢様学校…。
本来、保護者と受けるべき面談だが7割の学生が執事やメイドと現れる。
それはハコも例外でなく。
「今学期の茅野君の成績です。本人の希望はこのまま内部進学で短大が目標となってますが、御家族の意思もその方向で問題はありませんか?」
教師として必要な事を確かめる。
本人の希望と保護者の希望に食い違いを出さない為の質問だが、ハコも三者面談に付き添ってるのはハコの保護者ではなく執事の白鳥だ。
だから僕の質問に白鳥は黙ったまま、ハコが
「パパ達にその予定だと伝えてちょうだい。」
と命令を下し白鳥は
「はい、お嬢様…。」
とハコを中心にしか話をしない。
意味がない三者面談になってると思う。
既に国松に嫁いだ娘である以上、国松に恥をかかせなければ良いと考える茅野家はハコの自主性に任せるという体制だから、後の事は夫の僕と決めればいいと言われてるに違いない。
「なら…、そういう方向で…。」
持ち時間15分の三者面談が僅か5分で終了する。