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不器用な夫
第23章 教師
優等生で頭が良い、少し大人びた果歩だった。
ハコのような天然娘ならまだしも、常識を疑うような行動を繰り返す果歩に警戒する。
果歩が大きく息を吐く。
「あの日、私の初めては先生がいいって話したのを覚えてますか?」
果歩が僕の方ににじり寄る。
「ああ…、つまらない冗談だと思ってた。」
その日に果歩がハコに僕をものにすると強気で発言したお陰で僕はハコに狼狽える羽目に陥った。
そんな事をぼんやりと考える僕を見ながら果歩が一方的な話を続ける。
「あの日、先生は国松の家に行けと言いました。でも、私は緒方の家に行ったんです。」
国松の家に行っても経済学者の父は助言しかしない。
三浦家の窮地を直接的に救えるのは緒方家だけだという事実を否定するつもりはない。
「あの男は約束をしてくれたわ。私と私の家族を助けてやると…、その代わり…。」
果歩が自分を抱き締めて身震いをする。
目を見開き青ざめた顔…。
それを思い出すのもおぞましく果歩がその苦痛に歪む表情を浮かべる。
「まさかっ!?」
「あの男…、自分の姪を抱いたんです。それも一度ではなく、何度も…、何度も…。」
笑いながら果歩が瞳から涙を零す。
「もう…、いい…。」
それ以上を話す必要はないと果歩を引き寄せて抱き締めていた。
「もう…、いいから…。」
「いいえ…、その後に直ぐ父と母が離婚して私と母はあの男が待つ緒方の家に引き取られました。」
果歩は約束が違うと叔父を詰る。
叔父は果歩に開き直る。
「お前とその家族である母は守ってやっただろ?」
叔父に騙された果歩はもう一度、僕に助けを求めようとした。