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不器用な夫
第23章 教師
若く美しい女の身体を武器にして僕をその気にさせようと試みた。
「先生ってば…、有り得ないくらいに私に対して冷たいんだもん。」
僕のシャツの握り締めてボロボロと果歩が泣く。
「すまなかった…。」
教師として果歩を助けてやれなかった自分を責める。
「あの男…、毎晩のように私の身体を求めて来たわ。大学まで無事に進学をしたければ私の若さを利用しろとか言ってね。」
「そんな…。」
「しかも、銀行取り引きの大口客と寝てみないかと話も持ち掛けて来たわ。その人の愛人になれば何一つ不自由のない生活が出来るからと…。」
犯罪的だとまで感じる。
いくら名家を守る為とはいえ、その負担の全てを16の少女に負わせるとか異常である。
「だからね…、先生…、あの男に言ってやったの。その程度の男の愛人になるとか自分を安売りするつもりはないってね。」
「それで、国松の愛人か…。」
「そうよ。先生を利用したの。だって先生は私を見てくれないもの。先生が本当に愛してるのは奥様だけなんでしょ?幸せな奥様…、殺したいくらいに羨ましかったわ。」
果歩の言葉にゾッとする。
国松の婚姻が伏せられてて良かったと思う。
ハコが僕の妻だと果歩が知ればハコがどんな目に会わされるかわからない。
「僕が悪かったから…。」
教師として果歩に謝罪をする。
「いいのよ。だけど先生は来てくれた。このマンションは見張られてるの。あの男から逃げる生活を手に入れたけど、見張られてるから…。」
果歩の言葉に思わず辺りを見渡した。
「別に、盗聴されたりしてないわ。ただ、このマンションも緒方の銀行の不良債権の1つなの。」
果歩がくすくすと笑う。