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不器用な夫
第23章 教師



風呂から上がりダイニングに向かえばテーブルの上に公平が僕の夜食を置く。


「なんの嫌味だ?」


そう聞きたくなる。

出されたのは狐うどん…。

公平は無言のまま…。

狐うどんはハコが初めて僕の為にと作った料理。


「まさか?」


公平に確認する。

静かに頷く公平に胸が痛くなる。

今夜は僕が早く帰ると信じたハコが僕の為に用意をしてたのが狐うどんという事だ。

公平が責めるように僕を見る。


「お前の言いたい事はわかるが、明日はお前も共犯になって貰うからな。」


僕の命令に公平が目を見開く。


「坊っちゃま!?」

「わかってる。だけど、僕は教師だからな。」


僕はまだ国松の当主じゃない。

だけど僕は教師だ。

生徒に対して、やる気のない中途半端な教師なんかが国松の当主など務まる訳がない。


「協力してくれ…、お前だけが頼りだから…。」


公平に懇願する。


「御意…。」


何があっても公平は僕に従ってくれる。

ハコが用意をしていた狐うどんを食べ終えてからハコが眠るベッドに潜り込む。

ハコの顔を覗けばハコの目尻からこめかみに向かう涙の跡に気付く。


「ごめん…。」


届かない謝罪…。

そっとハコの瞼にキスをして眠る。

本当に悪かった…。

わかってても教師としての僕をハコにも理解して欲しいと僕の我儘を押し付ける。

翌朝、ハコよりも先に目が覚めた。

まだ穏やかな顔で眠る妻にキスをすれば、ゆっくりと目を開けてその瞳に僕が映る。


「おはよう…。」


出来るだけ何もなかったように振る舞う。

そんな僕の態度にハコが寂しく目を伏せる。


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