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不器用な夫
第24章 融資
「契約の前に条件があります。」
もう一度、不味いコーヒーに口を付ける。
「条件?」
叔父の表情が固くなる。
「三浦 果歩の事ですよ。今後、彼女に指1本触れる事は認めない。」
僕の条件に叔父が再び驚愕の顔を示す。
「それは…。」
緒方の問題であり、僕が口出しするのは大きなお世話というつもりだ。
「貴方が果歩にした事を咎めるつもりはありません。貴方が言う通り彼女は若くて美しい。だが彼女は僕の生徒だ。国松は自分のものを他人が触る事を絶対に許さない。」
「ですから、先生の為に愛人にと…。」
「愛人にするつもりもない。そちらが条件を飲まないのなら、この金は三浦に投資するだけだ。無駄な投資になるだろうが果歩が好きなように暮らし好きな進学が出来るのなら安い投資だと僕は思う。」
見る見るうちに叔父の顔が青ざめる。
人を平伏させる快感に興奮する僕は最大に近いフェロモンを放つ。
これが国松の力…。
圧倒的な権力とフェロモンで相手の闘争心を失わせ国松に従わせる。
「それが…、くっ…、国松先生のご希望なら…。」
しどろもどろになる叔父に更なる圧力を掛ける。
「国松先生?」
僕は銀行に対する正当な取り引き相手だ。
「いえ、国松様の…。」
頭取からただの銀行マンに堕ちた叔父を見下ろす。
俯き、薄くなった頭部の頂点を僕に見せて顔を上げる事すら出来なくなっている。
「果歩からは2度と気分の悪い話を聞きたくない。こちらの条件はそれだけだ。貴方の姪である果歩に自由な進学を…。」
「承知致しました。」
「後は弁護士が契約する。うちの弁護士は味にうるさい男だからインスタントコーヒーなどを出す失礼がないようにしてくれよ。」
「くれぐれも…、失礼のないように…。」
エアコンが効いた部屋で脂汗をダラダラと流す頭取を見下したまま銀行を出た。