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不器用な夫
第24章 融資
帰りの車は公平が不機嫌な目で僕を睨む。
「随分と肩入れをし過ぎでは?」
僕の個人資産とはいえ、国松の人間が果歩という少女の為に100億を動かしたとなれば何かと障害が起きると公平が心配する。
下手をすれば窮地に追い込まれた名家が国松の屋敷の前にズラリと並ぶ事になる。
ましてや学生に対して個人的に特別扱いをしたと苦情を申し立てる人間も現れないとは限らない。
「大丈夫さ。僕はあくまでも銀行に個人資産の投資を依頼しただけだ。三浦君の事はあの狸親父は口が裂けても語れない。」
国松を敵に回すリスクは充分に承知してるはずだ。
藤原家に手を出すな。
国松家を怒らせるな。
名家の間じゃ、そんな戯言が当たり前に浸透してる。
藤原家に対し国松は逆らう事が出来ない立場だが、同時に藤原家は国松家に対し不愉快な思いだけはさせないと気を使う。
両家の共存は歪んだ形で名家に広まってるから、国松を怒らせれば当然のように藤原家が黙ってないと勘違いが生まれてる。
公平は国松の家に着くまで不機嫌な顔を続ける。
あの程度の銀行に国松が取り引きしたと利用される事に腹を立てている。
額は知れてるが国松が取り引きしたという事実がかなり重要になる。
愛人の噂でなく、契約を交わしたという事実の方が銀行に対する信用が一気に回復する。
それで果歩の未来が守られるのなら安いものだと僕は思う。
「全ての学生を守る事は不可能なのですよ。」
「わかってるよ。」
「坊っちゃまが守るべきは…。」
「可愛い妻と次の国松の嫡子です。」
「わかっておられるのなら…。」
ハコに寂しい思いをさせるな。
そう言いたげに公平が僕を見る。