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不器用な夫
第3章 学校
「なら、国松先生の最終日の夜会のパートナーはまだ決まってませんよね。」
森下先生の期待はそこらしい。
最終日の夜会。
朝まで踊りあかすダンスパーティー。
その最終日だけはパートナーを選び一晩中パートナーと過ごすのがこの学校の伝統だ。
場合に寄っては教師でも生徒とパートナーを組む事がある。
パートナーが決まらない子はそうやって教師がカバーしてやるのだが、そんなパートナーはお断りとばかりに学生達は自分の家の執事や婚約者を連れて来る。
今の僕が森下先生のパートナーをする訳にはいかないと僕は思うのに森下先生は僕に期待する顔をやめようとはしない。
僕は森下先生の期待に答えるつもりがない。
不器用な男は期待する女の期待に気付かないフリをするのが精一杯だ。
「そろそろ昼休みが終わりますね。」
そう言って席を立つ僕にがっかりとした顔を露骨に向ける森下先生から僕は逃げ出す。
そんな顔をされても迷惑だ。
今までも何人かの女性から見せられた顔から僕は逃げ出すだけの男。
いずれはハコも僕にそんな顔ばかりを見せるようになるのだろうか?
つまらない地味なだけの男。
不器用で何の取り柄のない夫にハコが愛想をつかす日がやがて来るだろう。
僕はその時…。
ハコを自由にしてやれるのだろうか?
ぼんやりとしかイメージが湧かないハコとの夫婦生活を考えながら僕は授業をする。
ふと気付く…。
6時限目は僕が担任をするクラス。
果歩の顔を確認する。
「三浦君、茅野君は?」
今朝、果歩は僕に欠席者は居ないと言ってた。
果歩はそれがどうしたといわんばかりの顔を僕の方へと向けて来る。