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不器用な夫
第25章 避妊
父までもが僕を情けない者を見るような顔をする。
そして…。
「問い合わせの中には五代も来てたよ。」
と父が呟いた。
「五代から?」
「うむ…。」
父が深く頷き、僕は驚きが隠せない。
五代家は父が親しくしていた名家だ。
古くは藤原家とも血縁があり、数少ない国松家の女性が嫁いだ記録もある五代家…。
国松家と同じように地味な名家だが、ありとあらゆる名家との繋がりを何らかの形で持つ五代家は何かと名家から頼られる立場にある存在ではある。
「今更…。」
僕は苦笑いをする。
僕にとっての五代家と言えば、1人の女性しか浮かばない。
幼い頃、よくこの屋敷に出入りしてた少女。
お転婆でピンクのドレスを泥だらけにしてうちの庭を走り回る快活な女の子。
不器用で泣き虫な弱い僕はその子に蹴飛ばされた覚えがある。
五代 絵里美(えりみ)…。
いわゆる幼なじみという事になる。
中学に上がる頃から公平にべったりだった僕を呆れた顔で見てた絵里美。
『執事にべったりとか…、有り得ないわ。』
『執事にべったりで何が悪い?』
『自分の事くらいは自分でちゃんと出来る人間にならなきゃ。』
彼女は常に正しかった。
中学も高校も彼女とは違う学校だった。
僕は公平離れを目指し大学に進み、絵里美と再会する事になる。
『まさか…、要も教師になるの?』
『悪いか?』
『いい事だと思う。要なら傷付いた生徒の気持ちがわかってあげられる人だから…。』
絵里美の賛辞が照れくさかった。
昔は平気で僕を蹴飛ばしてた少女が落ち着いた大人になり、僕を立てる女性へと変わってた。
『要となら…、傍に居たいとか思う。』
何かのコンパの帰り道…。
お互いが少し酔ってた記憶がある。