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不器用な夫
第25章 避妊



酔いを冷ます為にと絵里美と何処かの夜道を2人で手を繋ぎ歩いてた。

絵里美が立ち止まり僕を見上げる。


『要になら…、いいよ。』


絵里美が止まったのはラブホテルの入り口。


『こんな場所は絵里美に相応しくないから…。』


そう言って僕は絵里美を連れてその場を立ち去るだけの不器用な男だった。

しばらく…、絵里美と付き合ってるような付き合ってないような不思議な関係が続いた。

お互いが好きだった事実は間違いない。

それでも僕は絵里美を傷付けるのが怖くて、僕の不甲斐なさに絵里美が悲しい顔をする。


『私は要の何なのかしら?』

『僕は絵里美が好きだよ。』


絵里美だけは公平を執事だとして割り切り、絵里美だけは僕を真っ直ぐに見てくれる女性だった。

ただ僕が好きだとは言っても愛してるとは言わなかっただけの関係だ。


『要はずるい…。』


絵里美はいつも悲しげに笑う。

そうやって僕の傍に本気で絵里美が居たいと願うのなら絵里美の事を僕も本気で考えなければと思った時もあった。

その絵里美が大学の卒業前に


『イギリスの学校に行くの。』


と僕に言う。

イギリスで本格的な英語を学んでから日本で教師をしたいと言う努力家の絵里美らしい考え方に僕に口を挟む余地などなく


『いってらっしゃい。』


と見送るだけしか出来なかった。

その絵里美が今更?

父に確認する。


「絵里美が日本に?」

「ああ、明日の屋形船に来るよ。」

「屋形船に!?」

「妹の亜由美(あゆみ)さんも一緒にね。」


妹も居たな…。

亜由美は絵里美と違い大人しく目立たない子。

絵里美の5つ年下だが、僕の傍には常に絵里美が居てあまり僕には近寄らなかったイメージしかない。


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